この記事のポイント
- 技術の進歩、つまりカメラを備えた携帯電話の登場により、自撮り写真はポップカルチャーの一部となった
- ソーシャルメディアは、自撮りが盛んに行われる空間を生み出した
- セルフィーは長年にわたって大きく変化し、より社会的に関与するようになってきた
- Z世代は他のどの世代よりも多くの自撮り写真を撮る
- ほとんどの人が、自撮り写真をオンラインに投稿する前にフィルターや編集ツールを使用している
20年前、写真の概念に驚くべきことが起こりました。私たちは、まったく新しい方法で自分の人生を共有し始めたのです。つまり、友人や訪れた場所だけでなく、自分自身の写真をたくさん撮るようになったのです。それ以来、自撮りは私たちのデジタルカルチャーの一部となりました。
「自撮り(セルフィー)」という言葉は比較的新しいものですが、自分自身を写したいという願望は歴史的に深く根付いています。中世やルネッサンス期の画家たちは、集団の肖像画の中にさりげなく自分を入れていました。今日のような様々なフィルターがかけられ監修されたセルフィーが生まれる前も、自画像は常に単なる外見の描写にとどまらず、自分自身を発見し、文化や社会を認識する手段であり、さらには自分のアイデンティティを再定義し、社会に意義を唱えるためのツールでもあったのです。
今や自撮りは個人を表現するためだけのものではなく、ネットの世界に自分を溶け込ませる手段にもなっています。そして、その際に見落とされがちなのが、プライバシーとセキュリティです。例えば、VPNを使うことで、SNSプラットフォーム上で自分の本当の居場所を隠すことができますが、対策をしている人は多くはないかもしれません。
本記事では、セルフィーの進化を探求し、最新トレンドやその背景の心理についてまとめています。あわせて、自撮りの画像をオンラインで共有する際に、データを第三者から保護する方法もご紹介します。ぜひご覧ください。
■目次
自撮りの進化
Z世代は他のどの世代よりも自撮りをする
最も自撮りをしている国はフィリピン、次いでアメリカ
自撮りの心理とメンタルヘルスへの影響
自撮りの未来
おまけ:自撮り写真をオンラインで共有する際にプライバシーを保護する方法
自撮りの進化
1839年、ロバート・コーネリアスが世界初の自撮り写真を撮影したのを皮切りに、セルフィーの概念は大きく発展してきました。しかし、自撮りが本格的に普及し、私たちの文化に根付いたのは、スマホ、特にフロントカメラを搭載したスマホが登場してからです。
最初の自撮り
初期の自撮りは、MySpaceなどのプラットフォームでプロフィール写真として登場しました。インターネットに接続できない携帯電話で鏡の前で撮影された、現在の基準からすると低品質の写真であることが多かったようです。新興のSNSプラットフォームのプロフィール写真として主に使用されたため、慎重にポーズをとり、主にユーザーの顔が写っていました。
自撮りに拍車をかけたソーシャルメディア
2000年代初頭、携帯電話技術の進歩に伴いソーシャルメディアが普及したことで、人々が個人的な瞬間を共有し、成長するオンライン文化に貢献できる場が生まれました。そして、「アヒル口」をはじめ、「キス顔」「魚口」などの自撮り写真が誕生したのです。
黄金期
2010年代半ば、自撮りは黄金期を迎えました。2013年、「selfie」はオックスフォード辞典の「今年の言葉」に選ばれ、その文化的意義を確固たるものにしました。その1年後には、「selfie」という単語がGoogleで最も多く検索されるようになり、InstagramやFacebookなどのSNSに多様なトレンドやチャレンジが溢れるようになりました。それに伴い、自撮り棒やリングライトなどの自撮りグッズが爆発的に普及しました。一方、セレブたちは自撮り文化を大々的に取り入れ始め、エレン・デジェネレスのオスカー自撮り、#wokeuplikethisブーム、カイリー・ジェンナーのメットガラバスルーム自撮りなど、いくつもの自撮り旋風がありました。
自撮りの弊害
革新的なセルフィー方法を求めて、危険行為をしたり、違法な領域に足を踏み入れる人もいました。屋上での自撮りや野生動物との自撮りは、大きなリスクを伴うものでした。自撮り棒は、安全上の問題から、または迷惑行為として、美術館や特定の観光地で禁止されていることもあります。残念なことに、自撮りに関連する怪我や死亡は増え続けており、「完璧な」写真を撮るために命を危険にさらす人もいます。
アクティビズムとボディポジティブの時代
2010年代後半になると、人々はセルフィーを活用して自分の政治志向を語ったり、#metooや#icebucketchallengeなどの社会的活動を支援したり、少数派の声を増幅させたり、慈善活動を推進することが多くなりました。
その後、セルフィーは、ノーメイク、ボディポジティブ、フィルターをあまり使わない、わざとらしいポーズを避けるなど、本物志向へと変化していきました。最近の2つの自撮りトレンドである「0.5(広角)」自撮り(携帯電話の背面に内蔵された超広角0.5レンズを使って写真を撮ること。撮影するまで結果を見ることができない)と「トラフィックミラー」自撮り(凸面鏡に自分を映して歪んだ自撮り)は、不完全さを受け入れてその瞬間を生のまま記録しようとするものです。
Z世代は他のどの世代よりも自撮りをする
写真とデザインのリソース会社であるEksposureの最近のレポートによると、世界中で毎日約9,300万回のセルフィーが撮影されているそうです。これはつまり、たくさんの笑顔とピースサインが溢れているという事かもしれません。ミレニアル世代がこのトレンドを広めた一方で、Z世代はこのトレンドを次のレベルに引き上げ、他のどの年齢層よりも多くのセルフィーを撮影しています。
最近の調査によると、Z世代は1週間に平均3.16回自撮りしており、これは1週間に平均1.37回自撮りをするミレニアル世代の約2.5倍であることが判明しました。また、「スマイズ」(歯を見せて笑うのではなく、目で笑う)、「0.5(広角)」自撮り、「トラフィックミラー」自撮りなど、流行りのポーズもZ世代が担っています。
さらに、もともとそれほど自撮りをしない団塊の世代を除くすべての世代で、女性の方が男性よりも自撮りをしています。団塊の世代では、男性の方が女性よりもわずかに多く、それぞれ週0.5回、週0.4回の自撮りをしています。
Z世代は、男性の中で最も自撮りをする世代ですが(週平均2回)、Z世代の女性は、毎週4回以上の自撮りをすることでトップに輝いています。これは、1週間に1.5回の自撮りをするミレニアル世代の女性や、1週間に1回の自撮りをするX世代女性の2倍にあたります。
世代 | 女性 | 男性 |
Z世代(1997年~2012年生まれ) | 4.08 | 2.23 |
ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ) | 1.54 | 1.19 |
X世代(1965年~1980年生まれ) | 0.98 | 0.66 |
ベビーブーマー(1946年~1964年生まれ) | 0.41 | 0.53 |
出典: Shiny smile
最も自撮りをしている国はフィリピン、次いでアメリカ
Eksposureの最新の統計によると、最も自撮りをしている国はフィリピンです。1位のパシグ市では、人口10万人あたり258人が定期的に自撮りをしています。これに続くのが、10万人に202人が自撮りをしているアメリカのニューヨーク州マンハッタンと、10万人に155人が自撮りをしているフロリダ州マイアミです。
実際、数年前の統計によると、アメリカでは62%の人が人生のどこかで自撮りをしたことがあり、18歳~34歳の若い年齢層が最も自撮り経験が多く、82%が自撮りをしたことがあるという結果でした。
35歳から54歳では63%が、55歳以上では44%が、自撮りをしたことがあると回答しました。
自撮りの心理とメンタルヘルスへの影響
SNS時代において、自撮りはどこにでもある自己表現の形となりました。一方で、自撮りは、数え切れないほどの議論を巻き起こし、賞賛と批判の両方を生み出してきました。多くの人は、セルフィーはナルシシズムの表れであり、注目を浴びるための必死の叫びであると主張します。しかし、よく観察してみると、違った姿が見えてきます。
オハイオ州立大学で行われたある研究は、自撮りがナルシスト的な傾向によってのみ行われるという一般的な考え方に疑問を投げかけるものでした。その研究によると、人は出来事の意味を伝えたい場合、その場面を写真に撮る傾向があり、自分を写真に入れる場合は、その出来事の身体的な体験を記憶したいためであることがわかりました。
一方、自撮りやSNSがメンタルヘルスに与える影響については、依然として議論の的になっています。メディアはしばしば、自撮りやSNSへの露出を、精神的な幸福度を急落させる原因として描いています。しかし、このテーマに関する研究では、少しニュアンスの異なる見解が示されています。例えば、ロンドン大学が行った調査では、12%の人がSNSが自尊心に悪影響を及ぼすと感じた一方で、10%の人が実際には自信を高めたと報告しています。
しかし、自撮り写真と自尊心、そしてメンタルヘルスとの関係は複雑です。英国の3,000人以上の回答者を対象とした調査では、なんと71%の人が自分の写真を編集せずにオンラインで共有することに抵抗があることが明らかになりました。編集ツールへの依存は、ネット上で完璧な自分を見せたいという願望を浮き彫りにしています。
自撮り写真を編集する人のうち、約8%がInstagramを利用しており、3分の2がFacetuneというアプリを利用しています。彼らは、肌の欠点が隠され、顔の特徴が変化するようにするために、写真の加工をしています。
フィルターもまた、オンライン上の外見を形成する上で重要な役割を担っています。男女ともに、自分の魅力を高めるためにフィルターを使うことがあることを認めています。しかし、女性の方がより頻繁に使用しており、10人に9人がSNSに自撮り写真を投稿する際にフィルター加工しているようです。
SNSが非現実的な期待を助長し、メンタルヘルスに悪影響を与えることは否定できませんが、自己表現と自己理解のためのプラットフォームとしての可能性を認識することも同様に重要です。多くの人にとってSNSは、自分の考えや感情、経験を自由に表現できる場です。SNSは、自分の考えを聞いてもらい、理解してもらうための媒体であり、精神的な健康を増進させる可能性があります。
したがって、自撮りの心理は、ナルシシズムという単純な物語を超えたものと言えるでしょう。自撮りは自己表現の多面的な形態へと進化し、個人が人生の有意義な瞬間を捉え、伝えることを可能にしました。SNSがメンタルヘルスに与える影響は依然として複雑ですが、自撮りはエンパワーメント、自己反省、そしてつながりのためのツールとして機能しています。
自撮りの未来
自撮り文化が進化する現代において、Z世代の影響力は見逃せません。彼らは反逆者として登場し、伝統的な美の基準に挑戦し、より高い信頼性を求めることで、セルフィーという芸術に革命を起こしています。「0.5(広角)」自撮りやノーメイク自撮りなどのトレンドは、作り込まれたイメージから脱却しようとする彼らの決意を象徴しています。
未来に目を向けると、これからも自撮りがSNSにおいて重要な位置を占めのは確実です。しかし自撮りの根本にある心理を考慮すると、今後は個人的な表現の瞬間を捉えるだけでなく、社会的な活動を促進し、支援するための手段として、セルフィーはますます利用されていくこともあり得るでしょう。
おまけ:自撮り写真をオンラインで共有する際にプライバシーを保護する方法
自撮り写真をオンラインで共有することが一般化していますが、安全性やプライバシーのリスクに注意することが重要です。以下のベストプラクティスに従って、オンライン上でセルフィーを共有する際にプライバシーを保護しましょう。
1. ジオタグ(位置情報)を無効にする
ほとんどのスマホには、写真を撮影した場所を記録するジオタグ機能が自動的に搭載されています。しかし、ジオタグを付けると、その情報にアクセスした人にあなたの動きや居場所が知られてしまい、プライバシーが侵害される危険性があります。プライバシーを守るために、端末の設定でジオタグを手動で無効にしましょう。
2. 背景に写りこんでいるものを確認する
自撮りをする時や写真を撮影する時には、背景に写り込んでいる物や場所に気を配ることが大切です。これらの要素によって、意図せず多くの個人情報が開示され、プライバシーが損なわれる可能性があります。身分証明書やパスポートなど、個人を特定できる書類を自撮り写真に写さないようにしましょう。また、留守中に休暇中の写真をソーシャルメディアに公開することは、あなたの家が無人になったことを犯罪者に知らせる可能性があるため、注意が必要です。
3. 写真のメタデータを削除する
撮影した写真には、撮影した時間や場所などのメタデータが含まれています。このデータを削除したい場合は、ファイルのプロパティにアクセスし、メタデータを削除するオプションから削除できます。情報を削除することで、プライバシーを保護し、意図しない居場所の公開を防ぐことができます。
4. VPNを常にオンにする
VPNは、SNSプラットフォームを含むサイトやサービスから、ユーザーのIPアドレスと位置情報を非公開にします。VPNアプリをご利用中のスマホやPCにダウンロードするだけで、簡単に接続できます。あるいは、ExpressVPNのAircove(米国で展開中)のような、VPNを搭載したルーターを入手することもおすすめです。VPNルーターを使うと、ホームネットワーク上のすべてのデバイスのセキュリティを確保でき、スマートテレビやゲーム機など、通常VPNアプリと互換性のないデバイスも含めて、すべてのデバイスでインターネット接続を暗号化できます。
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